伝統芸能

歌舞伎や能、浄瑠璃に長唄など、日本独自の伝統芸能の世界は未知な世界だと思っていませんか。
実は・・・まさにその通りなんです!
一般的には考えられないような常識が数々あります。

 

その中でも弟子という視点から見て、特にわかりやすい常識をご紹介したいと思います。
あくまでも私個人の経験談なので、必ずしもすべての伝統芸能がこうというわけではありません。

 

ですがお堅いイメージの伝統芸能も、裏側を知れば新たな視点で楽しめること間違いなしですよ。

 

スポンサーリンク



 

そもそも伝統芸能とは

着物伝統芸能
 

伝統芸能とは、古くから伝統的に続く芸能全般のことを指します。
ほとんどの分野では襲名制度を設け、中には一子相伝を実行する芸能もあります。
宗家や家元、分家などの重要な家柄のところには代々襲名する芸名も存在し、○代目という数字が高ければ高いほどその家の繁栄を表しています。

 

伝統芸能とは分かりやすく言ってしまえば着物を着て披露する芸能なのですが、例えば日本舞踊(約400年前から受け継がれてきた古典音楽で、受け継がれてきた振りを踊るもの)から派生した新舞踊(昨今の流行の演歌などで新しく作った振りを踊るもの)などの、伝統芸能から派生した似て非なる芸能も存在します。

 

伝統芸能から派生した新しい芸能は、誰にでもわかりやすく楽しめるように、を重視するのに対し、伝統芸能は受け継がれてきた伝統を守りながら次に継がせることを重視している為、どうしてもお堅いイメージが定着してしまうのです。

 

全てが年功序列で決まる

 

全てが年功序列で決るのはメージ通りだったという方が多いのではないでしょうか。
伝統芸能特有のものと言っても過言ではありませんが、だいたいは年齢や名取(特別な条件をクリアして芸名をもらった人)になってからの年数、家柄などで配役を決めることがほとんどです。

 

といってもこれには理由があります。
芸術すべてにいえることですが、作品の良し悪しの基準は人それぞれであり、実力主義にしてしまうと必ず意見が割れてしまいます。
そういったことを防ぐためにも、誰もが納得する基準が必要とされているのです。

 

一般の方からは疑問の声が上がる時もありますが、業界人からすると必要な常識となっています。

 

自分のスケジュールが自分のものではなくなる

 

例えば年末年始やゴールデンウィークに旅行に行きたいと思いますよね。
ですが弟子の立場になると気軽に計画は立てられなくなります。

 

基本的に師匠にいつ何時に呼ばれても駆けつけられるようにしておくのが暗黙の了解だからです。
これに兄姉弟子のお手伝いも入ってしまっては、休日ほぼ皆無は確実です。



☆SP☆



 

よく友人に「あなた最近本番ないって言ってるのに何でそんなに忙しいの?」と言われるのですが、師匠の御付きがあるからと言ってもなかなか理解してくれません。
逆に自分の本番がある時は堂々とスケジュールがあいていないと師匠に断れるので、圧倒的に自分の本番の稽古をしている方が楽です。

 

個人で受けた仕事は必ず師匠に許可を取る

 

弟子の印象は師匠の印象も左右されます。
狭すぎる伝統芸能の世界では、違うジャンルの業界のうわさもすぐ回るので、誰がどういう仕事をしたのかすぐに情報が回ってきます。

 

そこで疑問視されるような仕事を引き受けた人がいたら、その本人ではなく師匠が非難の対象とされるのです。

 

“師匠”とよばれる方々は非常に責任感が強く、「私がこの子をしっかり育てなければ!」という意思を持っているので、必ず話をもらった仕事は自分に許可をもらうようにと言ってきます。

 

そうすると、周りに何と言われようが「私が許可をだしました」と弟子を守ることができるからです。
本当に頭が上がらないです。

 

師匠のスケジュールを師匠に聞いてはいけない

 

師匠のスケジュールを師匠本人に聞いてはいけないなんて、理解できない方が多いと思います。
私は本格的に弟子入りしてから8年ほどたちますが、今でも理解できません。

 

師匠自ら自分のスケジュールを話す分にはいいのですが、弟子から師匠のスケジュールをきくのはNGとされています。
(師匠によっては大丈夫なところもあります)
師匠にわざわざ手帳を出させて自分のスケジュールを確認させるというのが申し訳ないという考え方からです。

 

ですが弟子だって予定がないわけではありません。
『自分のスケジュールが自分のものではなくなる』でお伝えした通り、師匠が必要とする場合は予定をあけておかなければならないので師匠本人からスケジュールをきけないということは大変致命的です。

 

そういうときは弟子同士で情報交換したり、師匠の共演者にこっそり聞いたり、スケジュールを決める会議を盗み聞きするなどしています。
弟子って大変です。

 

なんだかんだいって情のある伝統芸能の世界

 

伝統芸能というと厳しいイメージが先行しがちですが、厳しいからこそ情のある人たちばかりです。
師匠は親が子にするように弟子を育て、兄弟弟子は本当の兄弟のようにお互いに切磋琢磨しています。

 

華やかかつ厳かな世界に見える伝統芸能ですが、裏側では人間味のある人たちばかりです。
「あの人も厳しい弟子時代を過ごしてきたのかな」と思いながら観ると、また違った一面からより深く楽しめますよ。